裸足愛好家だったけど、12年経って靴の良さを知った

12年前、僕は裸足愛好家となった。

BORN TO RUN」という本に魅了され、ベアフットラン、通称・裸足ランニングにのめり込んだ。

最初は恥ずかしがりながら路上を裸足で散歩し、慣れてきたら横浜みなとみらいの遊歩道を走るようになった。

最初は足の裏の組織が弱く、内出血したが、続けるうちに丈夫になり、3年後には裸足でマラソンを完走した(4時間15分)

裸足であることの効能は大きい。

歩くこと・走ることで足の裏の筋肉に圧力がかかるので、ポンプの効果が働き、血液や体液の循環が良くなる。

血液・体液の循環が良くなれば免疫力もアップする。

また裸足で歩くこと、走ることで体の使い方もうまくなる。

靴を履いていると足裏に伝わる衝撃は「点ではなく面」になる。

靴底が衝撃を面で受け止めるので、靴の中で足が複雑に動くことはない。

しかし、裸足だと衝撃は点となる。

点の衝撃を足首から下にある28個の骨とその関節が連動して分散する。

足で分散できない衝撃は膝や股関節で分散する。

そんな能力が裸足で過ごし、動くことで養われる。

裸足のメリットはそれだけにとどまらない。

アーシング / グラウンディングという言葉があるが、素足を地面に接地することで体内の静電気がアースされる。

体内の静電気は炎症の原因となり、免疫に悪影響を及ぼすが、アースすることで不要な静電気がなくなり、悪影響から免れるようになる。

そんな裸足に何年も夢中だったのだけど、外で裸足で暮らす人など今の時代皆無である。

フィリピンの孤島、電気もない集落の人たちは裸足だったが、孤島でも港のある集落の人たちはサンダルを履いていた。

地球全体を見ても裸足で暮らす人たちはどんどん減っている気がする。

日本でも戦前・戦後は裸足の子供が多かったようだ。

横浜に住んでいた頃は裸足で走っていても好奇の目を向けられるだけだったが、千葉の田舎に引っ越してからは好奇の目を向けられるのは変わらないものの、褒められることが頻発した。

「えらいねぇ。子供のころは私たちもみんな裸足だったよー」

日本も70年前は子供たちは裸足、大人たちは下駄や地下足袋だったのだ。

田舎に住んでからは裸足であることを褒められるようになったが、ご老人たちに褒められるだけである。

若い世代はそんな理解はなく、「裸足の変な人」という印象だったようだ。

娘は6年前に保育園に入り、おととし小学生になった。

子供が地元社会に入っていくうえで「お父さんは裸足の人」というのではちょっとかわいそうかなと思ったので、数年前から裸足で外を歩かなくなった。

漁業サンダル、通称ギョサンを履くようになった。

漁業関係者のために開発されたサンダルなので、スリップしずらい。

足裏とサンダルの間も滑らないように突起があるし、靴底の溝も滑らない工夫がされている。

とてもフィットするので履き心地もいい。

そんなギョサンを履いていたのだけど、3年前くらいから膝に違和感を覚えるようになった。

ひざ裏が痛むのである。

最初は運動不足かな?とか、加齢かな?と思って運動してみたり、筋肉をゆるめてみたりしたのだけど、一時的に改善することはあってもすぐに戻ってしまう。

ずっと苦戦していた。

ところが靴を履くようになったらあっという間に治ってしまったのである。

あれだけ裸足愛好家だったのにどうして靴を?と思うかもしれない。

靴を履くきっかけになったは冬との付き合いだった。

冬に裸足はキツい。

特に雨の日はキツい。

霜焼けができるほどだ。

バリバリの裸足愛好家だった時は冬も裸足だったけど、ギョサンを履くようになってからは冬にブーツを履くようになった。

これ。

雨の日用に持っていた防水ブーツ。

これしか靴がなかったのだ。

冬の間、毎日これを履いていた。

しかし、ソールが厚いゴムでできているから安定感が悪い。

クッション性が高いというのかもしれないが、裸足愛好家の僕からすると安定感が悪いとしか言いようがない。

しかしこれ以上靴を増やしたくないという謎の執着があり、こればかり履いていた。

しかしどんどん膝が痛くなってくる。

ケアをしてもあまり良くならないので、「もしかして、この靴の不安定さが膝裏に余計な負荷をかけているのではないか?」と思うようになった。

それで思い切って靴を買った。

足袋のような薄いゴムソールなので、裸足に近い感覚がある。

クッション性がないので安定感がある。

これに履きかえたら、膝の痛みがぐんぐんなくなっていったのである。

驚いてしまった。

膝が治っていくにつれて動くことが楽しくなってきた。

ジャンプすることが楽しい。

膝が痛いとジャンプできないが、痛くないとジャンプしたくなる。

ジャンプというのは人間の根源的な楽しみの一つなのかもしれない。

トランポリン嫌いな子供ってあんまりいないのはそういうことかと思う。

裸足で走っていた時はジャンプすることの楽しみを知らなかった。

裸足だと高くジャンプするのはあまり合理的ではない。

裸足の魅力は衝撃を極限まで小さくして、少ない労力で遠くまで走れること。

忍者のようにスーッと横に水平移動してくような技術だ。

でもきっと忍者も裸足じゃなかったと思う。

裸足でのジャンプには限界がある。

しかし、靴を履くと裸足の限界を超えられる。

小さな小石などの衝撃を無効化してくれるから、高く飛んでも大丈夫なのだ。

長らく裸足愛好家を続けてきたけど、12年経って靴の良さがわかった。

裸足は健康にいい。体の使い方も上手くなるし、長距離を楽に走れるようにもなる。

しかしジャンプには弱い。

靴は跳んだり跳ねたりすることを楽しめる。

複雑に動くことを最大限楽しむためのツールなのだ。

日常ではさっき画像で見せたたびぐつを履いているが、走りに行く時は5本指のシューズを履く。

昔はこの手の靴は高級品で1万円〜2万円していたのだけど、だいぶ一般化されてきたおかげで、今ではAmazonで数千円で買えるようになった。

涙を流しながら小躍りしてしまうほど嬉しい。

裸足のメリットを享受してみたいなら、僕のようにいきなり裸足になるのではなく、こういった靴でこっそりデビューしてみてほしい。

5本指シューズは目立つけど、裸足ほどではないだろう。

まずは理屈から入りたい人は BORN TO RUN を読むことをお勧めする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です